theNet by CLOUDFLARE

戦略的な成長のためのアプリのモダナイゼーション

リホスト、リプラットフォーム、リファクタリングを行うべきタイミングとその方法

テクノロジー分野のリーダーにとって、「アプリをモダナイズすべきかどうか」は、もはや悩むポイントではありません。その価値はすでに理解しており、今まさに取り組んでいる方も多いでしょう。ただし、モダナイゼーションは決して簡単な作業ではありません。明確な戦略がないまま進めると、モダナイゼーションの取り組みは途中で行き詰ってしまいます。真の課題は、セキュリティを強化し、ビジネスの俊敏性を高め、持続的な価値を提供する道筋を選択することです。

今すぐ行動する必要があります。『2026年Cloudflareアプリイノベーションレポート』によると、アプリケーションのモダナイゼーションを効果的に進めた企業は、大幅なコスト削減、運用効率、顧客ロイヤルティの強化を実現し、予防可能なセキュリティインシデントの修復に費やす費用も削減しています。

アプリケーションのモダナイゼーションを推進する要因は3つあります:

1. AIには俊敏性が不可欠:AIを活用したシステムは、俊敏で安全、かつデータが豊富なインフラストラクチャの上でこそ力を発揮します。最新の『アプリイノベーションレポート』によると、アプリケーションをモダナイズしている企業は、AIで明確なROIを得られる可能性が3倍に高まるとされています。実際、リーダー企業の93%が、ソフトウェアの更新こそがAI活用を強化するための最も重要な要素であると回答しています。

2. 進化する脅威には、「セキュリティ・バイ・デザイン(設計段階からセキュリティ対策を組み込むこと)」が必要:高度化する攻撃者は、レガシーシステムのわずかな弱点をも悪用します。セキュリティチームとアプリ開発チームの連携は難しい場合がありますが、モダナイゼーションを進めてアプリやインフラ自体にセキュリティ機能を組み込むことで、統合された可視性と深い可観測性を得ることができます。

3. ユーザーは、「速く途切れない体験」を求めている:顧客も従業員も、アプリケーションに、高速でパーソナライズ化されて、いつでも使える状態であることを求めています。安全性や耐障害性に優れた高性能なデジタル体験を提供できない企業は、信頼と市場シェアの両方を失うリスクが高まります。

こうしたプレッシャーがあるにもかかわらず、「アプリのモダナイゼーションの取り組みが予定より進んでいる」と答えた大企業のリーダーはわずか13%にとどまっています。その背景には、特にAIやマルチクラウドの急速な進化といった、技術変化のスピードがあります。これらは同時に、レガシーアーキテクチャの限界を浮き彫りにしています。古いハードウェアやソフトウェアは重要な業務を支えているため、簡単には置き換えられず使い続けられているケースが多くあります。しかし実際には、古いコードのまま、ベンダーサポートも終了しており、最新のセキュリティ対策も適用できないなどの問題を抱えたまま運用されています。こうした古いシステムを維持し続けることは、パッチ未適用の脆弱性、サポートされていない依存関係、未発見の攻撃経路という地雷原を抱え続けることを意味します。

事業経営者にとって、アプリケーションのモダナイゼーションは単なる技術的なアップグレードにとどまりません。成長と戦略的防衛力強化のための取り組みです。



適切な問いから始めましょう

最適な「アプリモダナイゼーション戦略」は、時間と労力をかけて選択する必要があります。この際、スピード、コスト、リスク、長期的価値などの重要なビジネス要素を考慮します。こうした検討を行うことで、直近の業務ニーズだけでなく、持続可能な成長に向けた戦略目標とも整合した選択が可能になります。

選択は、企業ごとに異なる重要な判断を、次の3つの観点で素早く行う必要があります:

  • タイムライン:重要なアプリおよびインフラをどの程度急いでモダナイズする必要があるか?法令対応の期限や、即時対応が必要な既知の脆弱性はあるか?

  • 予算:日常の運用や既存プロジェクトを進めながら、アプリのモダナイゼーションにどれだけのリソースを割けるか?どの領域が、全社的なビジネス目標と一致しているか?

  • チームの能力:チームは最新のアーキテクチャを実装し、安全を確保するのに必要なスキルを備えているか?新たな採用や育成、外部パートナーとの提携は必要か?

進め方は企業ごとに異なりますが、モダナイゼーションに成功した組織に共通する要素は、断固としたリーダーシップを持つことです。

成功している企業は、少人数型のチームに権限を与え、全員の合意を待つことなく素早く動けるようにしています。Cloudflareの調査によると、調査対象となった企業の66%が、「チームの大小にかかわらず、意思決定プロセスが合理化されている」と回答しています。

また、ほぼすべてのリーダーが、アプリケーションに対して、危機対応だけでなく、継続的なモダナイゼーションにも専用の予算項目を割り当てる必要があることを認識しています。Cloudflareの調査によると、全組織のほぼ90%が「アプリケーションのモダナイゼーションに対する予算が増加する」と予想しています。

さらに、成功のカギは、セキュリティ・バイ・デザイン(最初からセキュリティを組み込むこと)で進めることです。「セキュリティ・バイ・デザイン」のアプローチにより、技術チームは日々のトラブル対応に追われることなく、より大きな視点での改善や価値創出に集中できるようになります。しかも、その効果はすぐに現れます。セキュリティ・バイ・デザインを取り入れた組織は、脆弱性対応やインシデント対応に無駄なリソースを使うことが減り、イノベーションと業務の高度化に人材を振り向けられるようになります。



アプリモダナイゼーションの3つの進め方のうちどれが適しているかを評価しましょう

重要な質問への答えが出せたら、アプリケーションをモダナイゼーションする際に使用する技術的な選択肢(リホスト、リプラットフォーム、リファクタリング)について考えます。どれか一つが万能というわけではなく、これらは相互に補完し合う手法です。多くの企業では、状況や目的に応じて、時期を分けて複数の手法を組み合わせて進めています。

リホスト(リフト・アンド・シフト)

最もシンプルな方法で、コードを変更することなく、単純にワークロードとアプリケーションをオンプレミス環境からクラウドに直接移動させる方法です。この手法は、最適化よりもスピードを最優先したい場合に選ばれます。たとえば、ガシーデータセンターを早急に閉鎖したい、契約期限が迫っている、チーム規模が小さい、オンプレミスインフラの老朽化から今すぐ解放が必要な場合には、リホストが向いています。ただし、リホストは本格的なモダナイゼーションへの第一歩と考えるべきです。

この方法は、セキュリティ面において複数の利点があります。主に、古いインフラに起因する脆弱性のリスクを一気に減らせる点です。早期のコスト削減が期待でき、その分をセキュリティ投資に回すことができ、短期間で成果が見えることから、経営層にも評価されやすいといった利点があります。

一方で、この方法では技術的な問題もそのまま持ち越される可能性があります。たとえば、古い認証方式や暗号化プロトコル、パッチ未適用のセキュリティホールもそのまま新しい環境へ移行されてしまいます。つまり、既知・未知を問わず、リスクの原因を解決しないまま、場所だけを変えることになる点には注意が必要です。

リプラットフォーム(リフト・アンド・リシェイプ)

リプラットフォームは、アプリの中核となるロジックは残しつつ、必要な部分だけを改善する方法です。すべてを作り直すのではなく、ポイントを絞ったアップグレードを行います。このアプローチは、マルチクラウドおよびハイブリッド環境全体で、効率良くアプリやインフラをモダナイズしたい場合に最適です。特に、早急に解決すべきセキュリティの課題がある場合に価値がある方法ですが、業務の中核となるロジックまでは変えられません。

レガシーアプリケーションのリプラットフォームは、移行中に脆弱性も同時に対処できるため、リホストよりも高いセキュリティ効果が得られます。アプリケーション全体を書き換えることなく、認証の最新化、より優れた暗号化の実装、最新のセキュリティツールとの連携を実現することができます。一方で、アプリの中身は依然としてモノリシック(一枚岩)状態であることは変わらないため、新機能を素早く追加しにくく、大きな設計上の問題や、構造的なセキュリティ課題には手を入れにくい状態になります。

リファクター(クラウド化に向けた再構築)

リファクタリングとは、最新のアーキテクチャを使用してアプリケーションをゼロから再構築する移行方法です。最初からセキュリティを組み込んだ設計で開発を行います。モダナイズの対象が、事業の中核を担うアプリケーション、成長スピードが速く、頻繁な変更がもとめられるアプリケーション、特に機密データを扱うアプリケーション、または高度な攻撃の標的になる可能性が高いアプリケーションの場合、リファクタリングを選択する必要があります。

リファクタリングは、CISOが最新のセキュリティ対策を最初から組み込めるため、セキュリティ面で大きなメリットがあります。多層防御、セキュア・バイ・デザイン、ゼロトラストの原則と言った考え方を、後付けではなく、基盤として実装できます。

一方で、費用の掛かる長期的な取り組みとなり、導入リスクも高いといったリスクもあります。新しいコードベースは、開発段階で適切に保護されないと、新たな脆弱性をもたらす可能性があります。

近年では、AIを活用したコード刷新技術が、この課題を大きく軽減しつつあります。AIを使用することで、アプリケーションのリファクタリングにかかる時間と複雑さを大幅に削減し、プログラミング言語の動的な変換を可能にし、レガシーコードを最適化された選択言語に直接変換できます。同時に、移行中に非推奨のライブラリやセキュリティの脆弱性を自動的に特定し、修正することもできます。



ハイブリッドな進め方を取る

ほとんどの企業は、1つの進め方を選択して、すべてのアプリケーションをその方法でモダナイゼーションを進めるわけではありません。アプリごとのリスクの高さや業務上の重要度に応じて、複数の手法を組み合わせて使います。実はこれこそが、最も現実的で効果的なセキュリティ戦略です。これが当てはまるパターンを見てみましょう:

1. 人事システムはリホストで対応:安定しており、機密データを扱う人事システムは、より安全なクラウド基盤に移行することで、すぐにリスク軽減の効果が表れるだけでなく、コスト面でのメリットも得られます。

2. 顧客ポータルはリプラットフォームで対応:クラウド基盤にリプラットフォームすることで、性能面の課題を解消します。この戦略は、ゼロから再設計しなくても、最新の認証、暗号化、APIセキュリティを組み込むことができ、顧客データを保護します。

3. コア製品はリファクタリングで対応:このアプリケーションはイノベーションの源であり、同時に攻撃の主な標的です。知的財産と顧客からの信頼を守るするために、セキュリティ重視のアーキテクチャで完全な最新化に投資します。

このハイブリッドアプローチの利点は、バランスの良さにあります。必要なところではスピード重視で現実的な範囲でセキュリティを最適化し、本当に重要な部分の変革には大胆に投資できるようになります。



アプリケーションモダナイゼーションの課題に備える

どのようなアプリケーションモダナイゼーション戦略を選択した場合も、途中でいくつかの課題に直面することは避けられません。例えば:

一貫性の確保:バラバラに存在するアプリケーションを一つの基盤にまとめ、すべてのアプリで一貫したセキュリティ、パフォーマンス、コンプライアンスを確保するのは難しい場合があります。

コスト:特に数百~数千のアプリケーションを抱える組織では、アプリケーション環境全体のモダナイゼーションにはコストがかかることが多くなります。

ベンダー管理:アプリのモダナイゼーションでは、ベンダー管理も大きな課題です。多くの企業は、ソフトウェア環境のさまざまな部分で複数のテクノロジーベンダーに依存しており、そのことがモダナイゼーションをさらに複雑にしています。

規制:グローバルに事業を展開する企業は、データ主権に関するルールや、業界ごと、地域ごとに施行される異なる基準、既存および新たに登場する業界または国ごとの規制への対応が求められます。

これらは確かに現実のものですが、これによって前進が妨げられるべきではありません。組織にとって適切なアプローチ(または複数のアプローチ)を選択し、十分な時間とリソースを投入することで、これらの課題を解決し、目標を達成することができます。



アプリケーションのモダナイゼーションを最優先に

俊敏性、セキュリティ、ユーザーエクスペリエンス向上が強く求められる今、アプリケーションのモダナイゼーションは生き残りの必須要素です。また、成長と耐障害性を支える土台づくりにもなります。逆に、行動を起こさなければ、技術的負債の増大、機会損失、支出の増加につながります。

すべての企業に当てはまる、唯一の正解はありません。最も成功しているモダナイゼーションプロジェクトは、明確なビジネス目標とセキュリティの必須要件に一致する技術的な選択をしている点で共通しています。

Cloudflareは、お客様がアプリケーションのモダナイゼーションに、リホスト、リプラットフォーム、リファクタリング、ハイブリッドのどれを選択された場合もその加速をサポートします。Cloudflareは、アプリ開発、アプリ配信、セキュリティ、可観測性の機能を単一のプラットフォームにまとめ、お客様のチームがソフトウェアを効率的に現在に導入し、将来に備えることを可能にします。

この記事は、技術関連の意思決定者に影響を及ぼす最新のトレンドとトピックについてお伝えするシリーズの一環です。


このトピックを深く掘りさげてみましょう。

『2026年Cloudflareアプリイノベーションレポート』で、アプリケーションモダナイゼーションの最新トレンドと業界リーダーに共通する戦略をご覧ください。

著者

James Todd — @jamesctodd
CloudflareフィールドCTO


記事の要点

この記事では、以下のことがわかるようになります。

  • アプリケーションモダナイゼーションのイニシアチブを戦略的に計画する方法

  • 主要なアプリモダナイゼーション戦略の違いと使い分け

  • アプリのモダナイゼーションで躓きやすいポイント


関連リソース

大人気のインターネット関連インサイトの要約を毎月お届けします。